はじめに
近年、建設業界は人手不足と高齢化という二重の課題に直面しています。1997年のピーク時には685万人いた就業者数も、今では480〜500万人程度に減少し、その35%以上が55歳以上の高齢者です。この状況の中、業界の効率化と労働力不足の解消策として注目されているのが、**施工管理アプリを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)**です。
しかし、DXの導入が必ずしも成功するわけではありません。私がこれまで勤務してきた2社のハウスメーカーでの実体験をもとに、施工管理アプリ導入の成功と失敗の要因について詳しく解説します。
筆者の経歴
はじめまして。私は現場監督歴10年以上の経験を持ち、現在はプライム上場企業に勤務しています。これまで、宅地建物取引士(宅建)、2級施工管理技士、FP2級、簿記2級といった資格を取得し、施工現場だけでなく、建設業に関わる幅広い知識を身につけてきました。
また、会社では業務効率化・DX化プロジェクトを推進しており、施工管理アプリの導入・運用にも関わっています。これまで、実際に施工管理アプリを導入して成功した会社と、導入に失敗し自然消滅した会社の両方を経験してきました。
この記事でわかること
•実際に施工管理アプリを導入した成功企業と失敗企業の違い
•DX化を進める際に現場で直面するリアルな問題
•施工管理アプリ導入を成功させるためのポイント
施工管理アプリの導入を考えている方や、DX推進に悩んでいる方にとって、実践的なヒントが得られる内容となっています。ぜひ最後までご覧ください。
1. 本当の現場の効率化とは?
私が経験したDXが成功した会社(建売住宅メイン)
1社目のハウスメーカーでは、施工管理アプリの導入が大きな成功を収めました。その理由は以下の通りです。
•トップダウンの強力な推進: 社長がDXに対して非常に前向きで、自ら導入を主導しました。社長の熱意が社員全体に伝わり、アプリの使用が徹底されました。
•協力的な社員: 私自身も導入の中心となり、現場スタッフへのサポートや勉強会を繰り返し実施しました。
•継続的な勉強会: アプリの使用方法や利便性を定期的に共有し、現場の理解を深める努力を続けました。
•建売住宅の特性: 建売住宅は設計や仕様の変更が少なく、アプリによる進捗管理がスムーズに行えたことも成功の要因です。
私が経験したDXが失敗した会社(注文住宅メイン)
一方で、もう1社のハウスメーカーでは施工管理アプリの導入がうまくいきませんでした。
•現場の協力不足: アプリは導入されたものの、現場の作業員・現場監督がほとんど使用せず、自然消滅しました。
•属人的な作業文化: 注文住宅は施主の要望による変更が多く、現場ごとの対応が求められるため、アプリでの一元管理が困難でした。
•デジタルリテラシーの壁: 高齢の職人さんが多く、スマートフォンやアプリの使い方に抵抗がありました。何度も説明を試みましたが、現場作業員の間には「今のままで十分」という意識が根強く残っていました。
2. 施工管理アプリ導入のカギは?
成功の条件
施工管理アプリを成功させるためには、以下のポイントが重要です。
1.トップダウンの推進力: 経営層がDXの必要性を理解し、積極的に推進すること。特に社長や役員が率先して導入を進めることで、現場の反発を抑えることができます。
2.現場の協力: DXは現場の理解と協力なしには成功しません。現場スタッフがアプリの利便性を実感し、積極的に使う環境を整えることが大切です。
3.継続的な教育: 勉強会や説明会を繰り返し実施し、現場スタッフのデジタルリテラシーを向上させることが必要です。
4.根気強さ: DXの導入は一朝一夕にはいきません。長期的な視点で取り組み、現場が慣れるまで根気強くサポートすることが求められます。
3. 施工管理アプリのメリットとデメリット
私が経験した中で感じた施工管理アプリのメリット・デメリットを整理して見ました。
メリット
1.資料の一元管理: 図面や工程表をアプリ内で共有できるため、全員が同じ情報をリアルタイムで確認できます。
2.写真の整理が簡単: 工事進捗の写真管理がスムーズになり、現場の状況を視覚的に把握できます。
3.進捗管理の効率化: 週に1回の全社ミーティングでも、建築スケジュールを一覧で確認できるため、進捗の遅れや課題を迅速に発見できます。
4.履歴管理の透明性: 退職した社員の担当案件も履歴が残るため、情報の引き継ぎがスムーズになります。
デメリット
1.高齢作業員のデジタル対応: 高齢の職人さんにはスマートフォンの使い方から説明が必要で、導入初期は多大な労力がかかります。
2.属人的な作業文化: 特に住宅業界では、個々の職人が独自のやり方を持っており、新しいツールの導入に対する抵抗が強いです。
3.急な変更対応の難しさ: 注文住宅の場合、施主の要望による急な変更が多く、その都度アプリを更新するのが手間です。また、通知を見逃す職人も多く、結局は電話での確認が必要になることも。
4. 現場のリアルな声と導入の現実
現場の高齢の職人さんたちは、スマートフォンやアプリの使用に不慣れなだけでなく、新しいシステムに対する心理的な抵抗もあります。経営陣とDX推進担当者だけの理想論ではなく、実際の現場の声をしっかりと反映することが重要です。
また、現場監督も現状のやり方に慣れているため、「このままで十分」という意識が強く、DX導入初期には負担が増えることも少なくありません。こうした現状を乗り越えるためには、泥臭い説明と現場への寄り添いが不可欠です。
5. まとめ:建設業界の未来を切り拓くために
建設業界の人手不足と高齢化は避けて通れない課題ですが、施工管理アプリを活用したDXの推進がその解決策の一つです。しかし、単なるシステム導入だけでは不十分であり、現場と経営層が一体となって取り組む姿勢が求められます。
トップダウンの強力な推進力と、現場の理解・協力を得るための地道な努力。この両輪が揃って初めて、真の現場効率化が実現します。未来の建設現場を支えるために、今こそDXの本質を理解し、着実な変革を進めていきましょう。
この記事が建設業界のDX推進を考える皆様のお役に立てれば幸いです。導入を検討されている方は、ぜひ現場の声に耳を傾けながら進めてみてください。
施工管理アプリを徹底比較!最適なツールを見つけよう
施工管理アプリの導入を検討している皆さんに朗報です!
「ダンドリワーク」や「アンドパッド」など、さまざまな施工管理アプリの機能や使いやすさを徹底比較した記事をご用意しました。自社の現場に最適なツールを選ぶために、ぜひ以下の記事もご覧ください。
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DXの第一歩は、自社に合ったツール選びから始まります。成功事例と失敗事例を参考に、最適なアプリを導入し、現場の効率化を実現しましょう!
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